アスベストの危険性を知る 中古住宅購入前に確認すべき調査と助成金・補助金について


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アスベストが住宅にもたらす危険性をご存じでしょうか。建築物にアスベストが使用されていると、そこに住んでいる人が健康被害を受けるおそれがあります。

そうした被害を防ぐためには、住宅を購入する前にアスベストが含まれているか調査することが大切です。ここでは、住宅購入前にできるアスベスト対策として調査の依頼方法や、調査に対して支払われる補助金などについてご説明します。

アスベストとは?

アスベストとは、「繊維状ケイ酸塩鉱物」のことで、石綿とも呼ばれます。以前は、ビル等の建築工事において、保温断熱効果を高めるため、建材として使われていました。しかし、繊維が極めて細かく、口や鼻から吸い込むことで健康に害を及ぼすことがわかったため、日本では現在、建材としてアスベストの使用は規制されています。

アスベストによる健康被害

飛散したアスベストの繊維を吸い込むと、肺がん、石綿肺(じん肺の一種)、悪性中皮腫などを引き起こすことがあります。アスベストによる被害は、ある程度進行するまで無自覚であることが多いため、早期発見が遅れることが少なくありません。

アスベストが使われている場所

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過去に建築された建物の中には、アスベストが使用されたまま残っているものもあります。ビルやマンションなどの耐火被覆材や、屋根材、壁材、天井材などのスレートボードなど、古い建物には注意が必要です。

アスベストを規制する法律

アスベストによる健康被害を抑えるために、国ではアスベストに関する法規制を定めています。アスベストを規制する法律には、業者に対しアスベストの使用を制限するものと、解体工事の際飛散を防ぐためのものがあります。

どのような法規制があるのか、その一部をご紹介します。

■アスベストに関する法規制

法規制 内容
建築基準法 建築設計事務所、設備業者、工務店など、すべての建築系の会社が、全重量の0.1%を超えるアスベストが含まれる建材を使用することを禁止している。また、建築物の増改築・大規模修繕・模様替えの際にアスベストを見つけ次第、除去することなどを義務づけている。
労働安全衛生法 アスベストの除去に関わる従事者の労働状況を管理するため、業者がアスベスト含有保温材を除去する場合に、届出義務を定めている。
建築工事に係る資材の再資源化等に関する法律 建築物・工作物の解体工事等に伴うアスベスト飛散防止対策を強化するため、アスベストが使用されている建築物の解体等を行う際に届出を義務づけている。
大気汚染防止法 人々の健康を守ることを目的に、アスベストを含む保温材などを除去する際の、建築物解体等の作業基準を定めている。また、工場や事業所から排出または飛散する大気汚染物質についての、排出基準なども定めている。

築年数でアスベスト使用を見分けるには?

建物にアスベストが含まれるかどうか、築年数によって確認することができます。断定することはできませんが、アスベストが含まれるかどうかは、2006年以前に建てられたかどうかをチェックしましょう。
アスベストに関する規制は1975年から始まり、2006年には「アスベストの含有量が重量の0.1%を超えるものは、製造、輸入、使用を原則禁止とする」として含有基準が引き上げられています。

専門家にアスベストの調査を依頼するには?

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中古マンションなどにアスベストが含まれているか専門家に調査を依頼したい場合、最もスムーズな方法は、近所の建築設計事務所や工務店、地方公共団体などに問い合わせることです。希望をすれば、専門的な技術と知識のある専門調査員が、現場に派遣されます。

アスベスト調査の流れ

アスベストの調査の流れは以下のとおりです。

  1. 専門調査員によるマンションの図面確認や現場での目視確認などが行われる
  2. 必要箇所の建材がサンプルとして採取される
  3. サンプルは専門調査員によって分析会社に提出される
  4. アスベストが建物に含まれているかの調査結果が後日、報告書として依頼者の元に届く

地域や混雑状況によりますが、調査は依頼後3週間から2ヵ月かかります。

アスベスト調査で補助金や助成金がもらえる

中古マンション等のアスベスト調査を行う場合、一定の条件を満たしていれば国から助成金や補助金が支給されます。例えば、東京都品川区では、アスベストに対する区民の不安を解消し健康被害の防止を図ることを目的に、「アスベスト調査助成・除去助成」を行っています。

区によって、または年度によって補助金額や助成金額は異なりますので、お住まいの市区町村に問い合わせてください。ちなみに、補助金は実際に調査が終了し、結果報告書を受け取ってからの支給となるため、立替金を準備しておきましょう。

国土交通省の「アスベスト対策Q&A」をチェック!

これまで、アスベストに関するさまざまな情報をお伝えしてきましたが、まだ不安がある人や、さらに詳しく知っておきたい人は、国土交通省「アスベスト対策Q&A」というウェブサイトにアクセスしてみてください。
アスベストによる健康障害や法規制のほか、どのような場所に使用されていたのかが、詳しく解説されています。

補助金を受ける手順や調査の流れについてもチェックすることができますので、中古住宅を購入する前に読んでおけば安心できるでしょう。

アスベスト対策は事前の調査が大切

中古住宅を購入する際、建材にアスベストが使われていないか不安がある人は、専門家に調査を依頼して確認しましょう。
購入して何年か住んだ後に気づいたのでは、手遅れとなってしまうこともあります。地域によっては補助金の支給を行っている場合もありますので、地方公共団体のウェブサイト等をご確認ください。
事前にアスベストの心配がない物件だとわかれば、購入後も安心して快適に暮らすことができるでしょう。

監修者:髙野友樹
株式会社 髙野不動産コンサルティング代表取締役。公認不動産コンサルティングマスター、宅地建物取引士。不動産会社にて仲介、収益物件管理に携わった後、国内不動産ファンドにてAM事業部マネージャーとして勤務。2014年、株式会社髙野不動産コンサルティングを創業。

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