マンション購入 or 売却する人は知っておきたい「耐用年数」と「建て替えタイミング」について


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マンションには耐用年数が定められており、それとは別に建物自体の寿命もあります。それらはどう違うのかご存じでしょうか。また、耐用年数を過ぎるとマンションの資産価値はどうなるのでしょうか。

ここでは、耐用年数、寿命、建て替えのタイミングなどについて解説していきます。

マンションの耐用年数とは?

マンションには建物自体の寿命とは別に、耐用年数があります。耐用年数は減価償却資産の耐用年数等に関する省令によって定められています。

マンションの場合はほとんどが鉄骨鉄筋コンクリート造または鉄筋コンクリート造の住宅で、1998年の税制改正で定められた耐用年数は47年です。

ただし、同じ鉄骨鉄筋コンクリート造・鉄筋コンクリート造の建物でも、事務所用か住宅用かなどで耐用年数は変わります。

■鉄骨鉄筋コンクリート造・鉄筋コンクリート造の建物の耐用年数

用途・細目 耐用年数
事務所用のもの 50年
住宅用のもの 47年
飲食店用のもの
・延べ面積のうちに占める木造内装部分の面積が30%を超えるもの
・その他のもの

34年
41年
旅館用・ホテル用のもの
・延べ面積のうちに占める木造内装部分の面積が30%を超えるもの
・その他のもの
 
31年
39年
店舗用・病院用のもの 39年
車庫用のもの 38年
公衆浴場用のもの 31年
工場用・倉庫用のもの(一般用) 38年

※国税庁「主な減価償却資産の耐用年数(建物/建物附属設備)」より抜粋して作成

減価償却とは、長期にわたって使用する固定資産について、高額な原価を使用する年数で分割し、毎年その価値を減少させて計上していく会計上の手続きのこと。減価償却によって計上される費用が減価償却費です。また、1年でどれだけ価値が減少するかを税制上で定めた数字を償却率といいます。

マンションの場合は、毎年会計上で減価償却し、すべて償却し終わるのが47年ということになります。マンションを自宅として所有しているだけなら減価償却は関係ありません。しかし、マンションを売却して利益を得た場合や、賃貸して家賃収入を得ている人の場合は確定申告をすることになり、そのときに減価償却をおこなう必要があります。

ここではマンションの減価償却の目安とされる耐用年数が存在するということを覚えておいてください。そして、この年数はあくまで減価償却の目安として設定されているもので、マンションが建てられて47年経つと老朽化して住めなくなるというわけではありません。

減価償却費の計算方法

では、簡単に減価償却費の計算方法を紹介しておきましょう。減価償却費の方法としては定額法と定率法がありますが、2016年4月以降に購入したマンションの場合は、定額法で計算することになります。また、建物本体と建物設備は法定耐用年数が異なるため、分けて計算する必要があります。

マンションの築年数が法定耐用年数を超えていない場合、建物本体の減価償却費の計算方法は次のようになります。

■購入価格が3,000万円で築年数15年の場合の減価償却費
法定耐用年数(47年)-(築年数15年×80%)=耐用年数(35年)
購入価格(3,000万円)×償却率(0.029)=減価償却費(87万円)
※償却率は国税庁「減価償却資産の償却率表」で耐用年数から算出

マンションの実際の寿命は?

マンションの実際の寿命(物理的耐用年数とも呼ばれる)については、さまざまな研究があります。それらの研究の多くは、セメントや骨材の質、水分量、施工方法などが正しく守られ、管理を怠らないコンクリート造の建物であれば、鉄筋コンクリート造の建物の寿命は、概ね100年程度と結論づけています。

例えば、国土交通省の「中古住宅流通促進・活用に関する研究会」報告書(2013年)には、参考として「RC造(コンクリート)の寿命に係る既往の研究例」が紹介されています。そこでは、鉄筋コンクリートまたは鉄筋コンクリート造建物の寿命について、「50年以上」「117年」「120年」「150年(外装仕上げによって延命した場合)」「68年」などとする知見が根拠論文名を挙げて列挙されています。

ただし、100年という寿命は、あくまでもしっかりとした管理やメンテナンスを実施することが前提となっている点に留意すべきです。特にマンションでは、適時適切な修繕工事の実施が不可欠。国土交通省は「長期修繕計画標準様式」や「長期修繕計画作成ガイドライン」を策定し、マンションの管理組合に対して長期修繕計画を立て、修繕積立金を集め、12~15年周期の計画的な大規模修繕をおこなうことを推奨しています。

そのため、特に中古マンションを購入するときは、対象マンションの長期修繕計画の内容と過去の修繕履歴を確認することが大切です。

マンションが建て替えられるタイミング

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マンションが建て替えられるタイミングには、実はマンションの耐用年数や寿命とは別の問題があります。マンションが建て替えられる経緯はさまざまですが、老朽化が直接の理由となっているケースはあまり多くありません。築50年で建て替えたとしても、建物自体の寿命はまだ数十年は残っているはずです。

一般的に、建て替えや取り壊しの要因は、給排水配管などの設備の劣化によるものが多いといわれています。特に、1970年代以前に建設されたマンションは、配管設備がコンクリートの躯体に埋め込まれており、交換が難しいとされています。配管設備の寿命は30年程度であり、漏水が目立つようになると建て替えが視野に入ってきます。

同様に、電力容量が不足するなど、設備の陳腐化が問題になるケースもあります。エレベーターが設置されていないマンションでは、居住者の高年齢化が進むほど不便さが際立つようになります。さらに、マンションが旧耐震基準で設計されていること、一戸あたりの専有面積が狭く住みにくいことなどの要因が、建て替えや取り壊しを後押しするケースも見られます。

一方、マンションが立っている場所の再開発や、区画整理などの外的要因によっても建て替えは発生します。近年では再開発の枠組みを活用して、団地型マンションを現代的なマンションに建て替えるといった取り組みも行われています。

耐用年数を過ぎたら?

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マンションの耐用年数である47年という数字は、あくまで減価償却のための目安として設定されている数字です。

しかし、現実にそれくらい古くなれば、マンションの資産価値は確実に下がります。特に、金融機関は法定耐用年数を重視して資産価値を計算します。住宅ローンの担保価値を計算する際も、物件の価格などに加えて法定耐用年数がどれくらい残っているかが考慮されます。担保価値が少ないと、その物件を買うときに長期のローンが組みにくくなるのです。

中古マンションの価格には、販売管理費などが含まれているため、一般的に新築を購入した時点で価値が10~20%程度下がるといわれます。20年目くらいまでは急激に資産価値が下落。その後は、緩やかに価値が下がっていきます。

耐用年数を過ぎたマンションを売却する場合

一般的にマンションは、耐用年数を過ぎた頃には価格が下がりきっています。さらに、金融機関による担保評価額もゼロに近くなります。そのため、買い手側は長期の住宅ローンを組めないことがほとんどです。もしも、築47年のマンションを売るとしたら、短期ローンか現金払いで購入できる人を探すことになります。また今後、修繕費用がかかる可能性も高いので、その点でも売却が難しくなるかもしれません。

かといって、建て替えもハードルが高いでしょう。マンションを建て替えるには、組合員総数および議決権総数の5分の4の賛成が必要という要件をクリアしなければなりません。この要件を満たしても、建て替えを実施するには、解体や建築に必要な費用の負担を迫られるのが一般的です。

本来、中古マンションを売却するなら、築20年以内に売るのが良いタイミングといわれています。反対に、購入する場合は価格が低めで安定する、築21年目以降の物件を買って、リフォームやリノベーションをして住む人が増えているようです。

耐用年数を過ぎた物件がまったく売れないというわけではありませんが、売りやすさを考えるなら、より早めに動いたほうがベターな選択であることには間違いありません。

マンションを購入・売却する際には耐用年数も参考に

マンションの耐用年数と建物自体の寿命、そして建て替えのタイミングはそれぞれ異なるということをご理解いただけたでしょうか。耐用年数と建物自体の寿命はイコールではありません。しかし、築年数が大きくなれば、資産価値が下がることは確かです。

また、マンションの建て替えは、難しいということも覚えておきましょう。さらに、今住んでいるマンションの寿命を考えるときや、中古マンションの購入を検討するときは、大規模修繕などのメンテンスがしっかりされているかどうかを確認することが重要です。

 

監修者:髙野友樹
株式会社 髙野不動産コンサルティング代表取締役。公認不動産コンサルティングマスター、宅地建物取引士。不動産会社にて仲介、収益物件管理に携わった後、国内不動産ファンドにてAM事業部マネージャーとして勤務。2014年、株式会社髙野不動産コンサルティングを創業。

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