耐震基準?耐震等級?マンションの耐震性はどうやって確認する?


02_01.jpg

マンションの耐震性を考える上で欠かせないのが、耐震基準や耐震等級といった用語です。
ここでは、旧耐震基準と新耐震基準では何が違うのか、耐震等級や長期優良住宅とは何なのかなど、知っておきたいマンションの耐震関連用語について解説します。

耐震基準には2つある

マンションなどの住宅には、耐震基準が定められています。耐震基準とは、住宅に限らず建築物や土木構造物の設計に際して適用される、耐震性能に関する基準のことです。

建物の耐震性が規定されている建築基準法は、1981年6月1日に改正されました。そのため、同年5月31日まで適用されていた基準は旧耐震基準、それ以降適用されている基準は新耐震基準と呼ばれています。以下、それぞれについてご説明します。

旧耐震基準

旧耐震基準は、1950年制定の建築基準法の中で規定された基準です。旧耐震基準では中地震に対し、ほとんど崩壊しない程度の強さを目標に建築することが求められています。
中地震とは、震度5強程度の地震という目安とされています。

新耐震基準

新耐震基準は、1978年の宮城県沖地震における被害状況を受けて導入された基準です。それ以前にも、1968年の十勝沖地震の被害を受け、1971年に鉄筋コンクリート造の建物における、主に柱の基準が強化されるといった改正がありました。新耐震基準では、それまでとは大きく異なる抜本的な見直しが行われています。

具体的には、震度6強~7程度の揺れでも倒壊・崩壊しない強度が求められています。
また、旧耐震基準に示されていた中程度の地震では、ほとんど損壊しない(軽度なひび割れにとどめられる)程度の強さがあることも目標とされます。実際に、1995年の阪神・淡路大震災(最大震度7)のときには、新耐震基準による建物はほとんど倒壊・崩壊しなかったと報告されています。

なお、耐震基準は、1981年以降も度々見直されています。1995年の阪神・淡路大震災を受けて2000年に改正され、2004年の新潟県中越地震を受けて2005年にも改正がありました。2007年には、建築確認申請の厳格化を盛り込んだ改正も行われています。

マンションの耐震等級とは?

耐震等級とは、国土交通省の住宅性能表示制度による建物の評価基準のことです。2000年に施行された住宅の品質確保の促進等に関する法律(品確法)にもとづいて設定されています。
耐震等級は1~3まであり、最も耐震性が高いのは耐震等級3です。

■耐震等級の区分

耐震等級1 新耐震基準と同程度の耐震性
耐震等級2 耐震等級1の1.25倍の耐震性
耐震等級3 耐震等級1の1.5倍の耐震性

多くのマンションは、耐震等級1を実現しています。避難所となる学校などの建物と同レベルとされる耐震等級2のマンションはわずかで、全体の1割に満たない程度です。大規模災害発生時に防災活動の拠点となる市役所や大病院などの建物と同レベルとされる耐震等級3のマンションとなると、さらに少なくなります。
ちなみに、一戸建て住宅で最も多いのは、耐震等級3です。マンションなら、耐震等級2であれば十分な耐震性を備えている物件といえるでしょう。

長期優良住宅とは?

02_02.jpg

長期優良住宅とは、2009年に施行された長期優良住宅の普及の促進に関する法律にもとづいて、長期優良住宅認定制度の基準をクリアして認定を受けた住宅のことです。
長期にわたり良好な状態で使用するための措置が、構造や設備に対して講じられた優良な住宅が該当します。具体的には以下の9つの項目で基準を満たしているかどうかが問われます。

  • 劣化対策
  • 耐震性
  • 維持管理・更新の容易性
  • 可変性
  • バリアフリー性
  • 省エネルギー性
  • 居住環境
  • 住戸面積
  • 維持保全計画

このうち、耐震性については耐震等級2相当以上の強度が求められています。一戸建てだけではなく、マンションの中にも長期優良住宅の認定を受けているケースはありますが、その数はまだ少ないのが現状です。
耐震性以外にも住みやすさを求めるのであれば、長期優良住宅認定マンションが売り出されていないか調べてみると良いでしょう。

地震に強いマンションの構造と形状

多くのマンションは、鉄筋コンクリート造(RC造)です。そして、同じ鉄筋コンクリート造の建物でも、「ラーメン構造」と「壁式構造」という構造形式があります。簡単にいうと、ラーメン構造は柱と梁で荷重を支え、壁式構造は壁で荷重を支える構造のことです。

01.jpg

両者のうち、より耐震性が高いといわれているのは壁式構造です。地震が発生した際、壁式構造では壁、天井、床のすべてで揺れを受け止めます。その分、受けた地震エネルギーが分散し、建物が倒壊しにくいとされています。

また、建物の形状も耐震性に影響します。マンションを真上から見たときに、四角形になっているものは比較的耐震性に優れています。これに対し、T字型、コの字型、L字型、十字形のようなマンションは、相対的に耐震性が低いといえます。

耐震基準や耐震等級を確認する

02_03.jpg

マンションの耐震性は、まず旧耐震基準で建てられた建物か、新耐震基準で建てられた建物かを確認して調べるのが一般的です。
その際、1982年前後に完成した物件に注意してください。販売図面に「1982年完成」とあっても、改正前に建築確認申請を出した可能性があるためです。1981年6月1日以降に確認申請を行った建物であれば新耐震基準での設計が義務づけられていますが、マンション建設は確認申請から許可が得られるまで1年程度かかります。1982年完成であっても、旧耐震基準で許可されたマンションかもしれません。
さらに、建設期間も1年程度かかることがあります。マンションを購入するのであれば不動産会社や管理会社に問い合わせれば、どちらの耐震基準で建てられているか調べてもらえます。

ちなみに、旧耐震基準で建設された建物は、当時の建築基準法にもとづいて建てられているので違法というわけではありません。しかし、現行の法律には適合しないため、既存不適格建築物と呼ばれます。

2000年以降に建設されたマンションは耐震等級も確認

2000年以降に建設されたマンションであれば、耐震等級についても確認しておくと良いでしょう。新築マンションの場合は、物件情報に耐震等級が記載されていることもあります。

古いマンションで耐震性が気になる場合は、耐震診断を受けてみるという選択も考えられます。ただし、個人で建物の耐震診断を依頼するのはコストがかかり、あまり現実的とはいえません。耐震診断は、基本的にマンションの管理組合がおこなうものです。
管理組合が耐震診断を実施していれば、その結果を購入前に知ることはできます。実際には、耐震診断を行っているマンションは多くありませんが、診断結果を得られれば安心材料となるでしょう。

覚えておきたい耐震関連キーワード

では、最後に耐震関連で覚えておきたいキーワードをご紹介します。「耐震構造」「制震構造」「免震構造」という言葉を見たことがある人も多いのではないでしょうか。これらは、耐震性の高い構造の種類を表したもので、それぞれにメリット・デメリットがあります。

02.jpg

耐震構造

耐震構造は、地震の揺れに耐えることを意図して造られた構造です。柱や梁など、主要構造の強度や資材の粘りを上げることで地震に耐え、倒壊や崩壊を防ぎます。コストは安いものの、大地震では建物に被害が出る可能性もあります。

制震構造

制震構造は、地震の揺れを吸収することを意図して造られた構造です。建物内部に錘(おもり)やダンパーといった制震部材を設置し、エネルギーを吸収して揺れを軽減させます。柱や梁などの主要構造部材に対する被害を抑えることが期待できます。

免震構造

免震構造は、地震の揺れが建物に直接伝わらないよう意図して造られた構造です。建物と地盤のあいだに積層ゴムなどの免震装置を設置することで、地震エネルギーの伝達を遮断します。コストは高いものの、建物の被害を最小限に抑えることが期待できます。

耐震基準、耐震等級を知って安心できる生活を

現在住んでいるマンションや購入候補のマンションの耐震性を知りたいときは、まず新旧の耐震基準について調べましょう。耐震等級や長期優良住宅の認定も大いに参考になります。また、マンションの構造や形状、地震に対する構造形式についても確認しておきましょう。

そして、耐震性について不安があれば、不動産会社や管理会社に問い合わせるのが最も確実です。本記事で取り上げた用語の意味を理解した上で情報を得て、安心できる建物であるかどうかをチェックしてみてください。

 

監修者:髙野友樹
株式会社 髙野不動産コンサルティング代表取締役。公認不動産コンサルティングマスター、宅地建物取引士。不動産会社にて仲介、収益物件管理に携わった後、国内不動産ファンドにてAM事業部マネージャーとして勤務。2014年、株式会社髙野不動産コンサルティングを創業。

Top