マンションの価格設定の決まり方【中古と新築それぞれの決定要因を教えます】


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マンションの価格はどのような条件で設定されるのでしょうか。適正な価格でマンションを購入するには、何が価格に反映されているのかを正確に理解しておく必要があります。また、新築と中古では価格設定に違いがあることも知っておくべきでしょう。

ここでは、マンションの価格設定について解説します。

新築マンションの価格が決まる項目

新築マンションの価格設定は、何によって決まるのでしょうか。項目別に説明していきましょう。

住戸の広さ

住戸の専有面積が広いほど価格は高いというのが基本です。同じ3LDKの住戸でも、専有面積に違いがあれば価格に差が出ます。そのため、マンションの価格を比較するときは、坪単価を使うことがよくあります。坪単価は1坪(約3.3平方メートル)あたりの販売価格で、次の計算式で求められます。

坪単価=販売価格÷面積(坪)

ただし、坪単価の算出基準には、延べ床面積や施工床面積などの種類があるので要注意です。施工床面積にはベランダや玄関ポーチが含まれるのが一般的で、延べ床面積より広くなるため坪単価は安くなります。

また、同じ広さでも間取りが違っている場合、間取りが増えたほうが価格は高くなるケースがあります。例えば、同じ広さでも2LDKと3LDKでは壁やドアなどのコスト増などによって値上がりするため、3LDKのほうが高くなる傾向があります。

住戸の向き

リビングのある部屋のベランダや窓が、どの方角を向いて造られているかによっても価格は上下します。日当たりの良い南向きの物件が最も高く、次いで東向き、西向き、北向きの順で安くなるのが一般的です。

目安として、南向きの住戸を基準にして、東向きは-3~-7%、西向きは-5~-9%、北向きは-10%程度の価格差が生じるといわれます。2面または3面が外に接する角住戸の場合には南東が最も価格が高く、南西がそれに続きます。

南向きの住戸のメリットは日照時間が長くて暖かく、洗濯物が乾きやすいことです。一方、床や家具が日焼けしやすく、夏は暑くエアコン使用による電気代がかさむといったデメリットもあります。また、同じ南向きでも隣の建物が非常に近いなど、条件によっては住みやすさが変わり、価格もそれに連動します。

住戸の位置

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建物の両端にある住戸を、角住戸(角部屋、妻側住戸)といいます。角住戸は2方向または3方向に窓を設置できるため、日当たりや風通しが良いことが多く、人気のある住戸です。2面または3面が開放されるため、中住戸よりも間取りのアレンジがしやすいのも特徴で、ベランダがL字型になっている物件もあります。また、隣戸が片側にしかないので騒音も軽減されます。

特に、外廊下があるタイプのマンションの場合、両端にある角住戸の一方はエレベーターや階段から最も離れた場所に位置することが多く、部屋の前を通る人が少なくなります。その分、プライバシーが保たれるので価格も高くなる傾向があります。

住戸の階数

階数が違う場合、通常は高層階ほど価格が高くなります。なぜなら、高い階にある住戸ほど周辺の建物の影響が小さくなり、眺望が良くなるからです。

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また、日照時間も長くなります。高層マンションほどそうした恩恵は大きく、タワーマンションでの高層階の北向き物件は、十分な明るさが得られるわりに価格が安いとの理由で、人気が上がっているようです。さらに、東京タワーが見えるなど特別感のある眺望はアピールポイントとなり、価格にも反映されます。

反対に、低層階は周囲の建物の影響を受けやすく、眺望もあまり期待できません。特に、1階は外からの視線が気になるケースもあります。また、比較的空き巣などに狙われやすいため、価格は安く設定される傾向があります。

目安として、広さと間取り、方角が同じ住戸の場合は、1階違うと0.5~2.5%の価格差が生じるといわれています。

その他の条件

エレベーターや階段に近い場所に位置する住戸は、人の出入りが気になるとの理由で価格が安くなることがあります。また、低層階では駐車場、駐輪場、ごみ置き場、エントランスなどの共用施設の近くに位置するケースがあり、この場合も割安な価格が設定されます。

反対に1階でも、一戸建てのように庭が使えるような物件は価格が高くなります。建物の構造やブランド、共用スペースの充実度、セキュリティの強固さなどでアドバンテージがある物件には、住戸が狭くても高い価格がつけられます。階数や広さが絶対ではないことも知っておきましょう。

中古マンションの価格はここで決まる

中古マンションの価格設定の条件は、新築マンションと異なる部分がいくつかあります。広さ、方角、位置、階数などが価格に影響するのは新築と同様です。また、築年数も価格に大きく反映され、基本的に古いほど安くなります。それらに加えて、以下のようなポイントも価格設定に関係してきます。

売主の希望

中古マンションの「売り出し価格」は売主が決めます。不動産会社が査定価格を示し、その価格を参考にすることはありますが、その価格どおりで売るかどうかは売主が判断するのです。売主が不動産業者の場合は、購入価格やリフォーム代に利益を上乗せするといった方法で価格が設定されますが、売主が個人だとやや事情が異なります。

売主が個人の場合、その人が少しでも高く売りたいと考えるか、安くても早く売りたいと考えるかなどが価格に大きく反映されます。最初は相場より高い価格で売り出していても、売れなければ徐々に価格が下がることもあります。

中古マンションの平均的な売却期間は3ヵ月が目安といわれ、それよりも長く売りに出されている物件は価格が下落する傾向があります。売主が相続や住み替えなどで一刻も早く売却したいと考えていれば、価格が値下がりする可能性は高くなるでしょう。

室内の状態

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中古マンションは、そこに住んでいた人がいた関係上、物件ごとに室内の状態が異なります。多くの場合、次の人が住む前にはリフォームが行われますが、現状のままでも住めるくらいコンディションの良い物件もあります。

リフォーム済みの物件であればその分、価格も上がります。リフォームのレベルによっても価格は変わります。また、最近は物件を現状のまま購入し、自分の好きな内装や間取りにリフォームやリノベーションを施して住みたいと考える買い手も増えています。そのため、あえてリフォームを実施していない物件もあり、その場合は価格が安くなります。

ほかには、水回りや空調など、室内設備の状態やグレードのほか、配管や配線の状態なども価格に影響します。

売却のタイミング

景気の移り変わりや、近隣類似物件の相場の変動による影響も見逃せません。需要と供給のバランスがとれていれば価格はあまり変わりませんが、需要が高くなれば価格は上昇、供給が上回れば価格は下落します。投資対象として中古マンションを売買する人もいるため、いったん価格が下がり始めると投資家が売りに走る連鎖が起きるケースも見られます。

賃貸物件の場合は、引越しシーズンとなる春には一気に需要が高くなります。では、中古マンションはどうかといえば、シーズンによる影響はあまり大きくありません。季節による価格の変動は、それほど気にしなくて良いでしょう。

最終的には交渉で決まる

中古マンションの売買では、しばしば売主と買主のあいだで値引き交渉が行われます。必ず値引きが行われるわけではありませんが、値引きについて両者の合意が成立すれば、成約価格は売り出し価格よりも安くなります。売主が値引きを受け入れるかどうかは、早く売却したいと考えているかどうかや、ほかに購入希望者がいるかどうかなどによります。

値引き交渉は、買主が購入申込書に値引き後の金額を記入し、不動産仲介業者が交渉するのが一般的です。それに対して売主が了承すれば交渉が成立したことになり、売買契約が締結されます。

価格設定の条件を知ることで適正価格もわかる

新築マンションと中古マンションでは、価格を決定づける項目が異なります。マンションを購入する際は、これらの違いについて理解しておくと、適正な価格で物件を購入できるでしょう。

また、物件に対する自分の希望をリストアップし、優先順位をつけておくことも大切です。優先順位の高い部分にはこだわり、優先順位が低い部分については譲るようにすれば、希望に近い価格の物件が見つかる可能性も高くなるはずです。

 

監修者:髙野友樹
株式会社 髙野不動産コンサルティング代表取締役。公認不動産コンサルティングマスター、宅地建物取引士。不動産会社にて仲介、収益物件管理に携わった後、国内不動産ファンドにてAM事業部マネージャーとして勤務。2014年、株式会社髙野不動産コンサルティングを創業。

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