マンションの修繕積立金とは?用途や相場、注意点について解説


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マンションを購入して居住する場合、登記費用、固定資産税など、さまざまな費用がかかります。そのうちのひとつが修繕積立金です。

修繕積立金はマンションの居住者が毎月支払うものですが、なぜ修繕積立金を支払うのか、集まったお金は何に使われるのかといったことについて、しっかり理解しておきましょう。

なぜ修繕積立金を支払うのか?

修繕積立金とは、マンションの修繕工事に使う目的で積み立てているお金です。マンションの居住者は毎月修繕積立金の支払いが求められ、その金額はマンションの管理組合や分譲会社が作成した長期修繕計画によって決まります。

どんなマンションであっても、年数が経てば劣化は免れません。雨風にさらされたり、多くの人に設備が使われたりすることで、修繕が必要な箇所は増えていきます。修繕積立金は、長期的にマンションの住み心地を守るための大切な資金なのです。

戸建ての場合は修繕積立金はありませんが、長く住んでいれば修繕が必要になるため、戸建てであっても自分で修繕費を積み立てておく必要はあるでしょう。

修繕積立金の具体的な用途

では、修繕積立金として集められたお金は、具体的にどのような部分に使われるのか、例を挙げて解説します。

耐久性を維持するための外壁改修工事

マンションも雨風にさらされると、どうしても外壁が痛みやすくなります。ひび割れが生じると、そこから雨水が浸透していくことで建物内部でも劣化が進んでしまいます。そこで、マンションの安全性を保つために、修繕積立金を使って定期的に外壁改修工事が行われます。

このメンテナンスをしっかり行うことで、建物の耐久性を維持することができます。

排水管などの取替作業

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「台所や浴室などで水が流れなくなった」「トイレが詰まりやすくなった」といった排水に関するトラブルが起こると、生活のさまざまな場面で支障が出てしまいます。修繕積立金は、排水管やそれに付随する道具の交換などにも使われているのです。

災害による被害の修繕

「地震でマンションの一部が損壊した」「台風によって設備の一部が壊れた」といったことなど、地震や台風などの災害で被害を受けることがあります。そうした突発的な災害による被害の修繕に対しても、修繕積立金が使われます。修繕内容は外壁の塗装や瓦礫の撤去などがあり、その用途はさまざまです。

集合ポストや駐車場などの共用部分の修繕・変更

マンションには専有部分と共用部分があります。専有部分とは、一般的に壁や床、天井で囲まれた居住スペースのこと。共用部分とは、エントランスや屋上など、マンションの他の住民と共同で使っている部分を指します。修繕積立金は、この共用部分にある集合ポストや駐車場・駐輪場の修繕・増設に使われることもあり、マンション住民の生活を快適にする上で欠かせない資金となっています。

修繕積立金と管理費の違いは?

マンションを購入した後に毎月支払う費用として、修繕積立金のほかに管理費があります。修繕積立金と管理費は、そのお金の用途が異なりますので、しっかり理解しておきたいところです。

修繕積立金の主な使用目的は、長期修繕計画にもとづいて行われる大規模な修繕です。

一方の管理費は、マンションの日々の生活を保つ管理や修繕のために使われています。例えば、エレベーターの電気代、マンション管理組合の運営費用、エントランスの掃除費などが挙げられるでしょう。管理費は、マンションでの生活を毎日快適にするために使用され、修繕積立金同様、住民が生活する上で欠かせない費用です。

修繕積立金の相場は?

修繕積立金で気になるのはその相場です。ほかのマンションでは、毎月どれくらいの金額を支払っているのか、果たして今払っている金額が適切なのか、気になることもあるでしょう。修繕積立金の目安と傾向について解説します。

修繕積立金の平均額は1万1,243円

毎月支払っている修繕積立金の平均額については、国土交通省が「平成30年度マンション総合調査結果からみたマンション居住と管理の現状」で発表しています。この資料によれば、一戸あたりの月平均修繕積立金は2018年度では1万1,243円(「駐車場使用料等からの充当額を含む修繕積立金」は1万2,268円)でした。

この数字はあくまでも平均値であって、鉄筋コンクリート造のマンションならいくらというような目安になる金額はありません。修繕積立金の支払額は、マンションの規模などによって前後します。実際に住むマンションによって修繕積立金の支払額は異なってきますので、あくまで参考程度と考えましょう。

■1戸当たりの修繕積立金月額
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中古のほうが修繕積立金は高い傾向に

同じ条件の新築マンションと中古マンションの修繕積立金を比べた場合、中古マンションのほうが修繕積立金は高くなる傾向があります。

その理由は、修繕積立金の回収方法として、ほとんどのマンションで積立額を徐々に値上げしていく「段階増額積立方式」を採用しているからです。そのため、年数が経過している中古マンションのほうが、修繕積立金は高くなるといえるでしょう。

なお、もうひとつの回収方法としては、長期修繕計画で算出された修繕工事費の合計を、計画期間中に均等に積み立てていく「均等積立方式」があります。

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修繕積立金の注意点

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修繕積立金は、長期修繕計画にもとづいた大規模な修繕に使用するという目的があるため、支払うにあたっては、注意しておきたい点がいくつかあります。

修繕積立金はマンションを売却しても返還されない

修繕積立金は、マンションを売却しても返還されることはありません。今まで支払ってきた修繕積立金は、将来に必要な大規模修繕に使用されるものですので、その住戸を購入した次の人に受け継がれます。

修繕積立金は値上がりすることも

建物は、年数が経過すればするほど老化が激しくなるため、それに伴って修繕積立金も上がりやすくなります。さらに、修繕費の価格自体が上昇傾向にあり、そうなると今後の修繕積立金もそれに伴って値上げされる可能性があります。

また、大規模修繕の際に修繕積立金の不足があれば、一時的な支払いが必要になったり、その後の修繕積立金が値上げされることもあります。

住宅ローンと合わせて支出が大きくなる可能性も

マンションを購入する際に住宅ローンを組むと、月々の支払いが発生します。それに加えて、修繕積立金の支払いのことも考えておかないと、月々の支出が予想以上に増えてしまうことがあります。家計を逼迫させないためにも、住宅ローンを組む前に毎月の支出をしっかり把握して、無理のない支払い計画を立てておくようにしましょう。

もし、住宅ローンを組んだ後に修繕積立金が値上がりし、月々の返済金を変更したい場合は、住宅ローンの見直しを検討したほうがいいかもしれません。ただし、希望の条件が必ずしも通るわけではありませんので、将来の修繕積立金の値上げもある程度想定して住宅ローンを組みましょう。

マンション購入時には修繕積立金も確認を

修繕積立金は、マンションに住む上で継続的に支払いを求められるもので、将来にわたって住民の生活を守るための欠かせない資金です。

毎月無理なく修繕積立金を支払えるよう、マンション購入前には修繕積立金がいくらかかるかを確認しておき、値上げも想定して支払い計画を考えましょう。

 

監修者:髙野友樹
株式会社 髙野不動産コンサルティング代表取締役。公認不動産コンサルティングマスター、宅地建物取引士。不動産会社にて仲介、収益物件管理に携わった後、国内不動産ファンドにてAM事業部マネージャーとして勤務。2014年、株式会社髙野不動産コンサルティングを創業。

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