マンションで問題になりやすい騒音トラブルの予防と対策は?


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マンションで暮らしていて発生するトラブルの中で、問題になりやすいのが騒音に関するトラブルです。防音性能・遮音性能に優れたマンションも増えていますが、それでも騒音トラブルがなくなるわけではありません。
実際にどのような騒音問題が起きているのか、その対策や解決策はあるのかなど、マンションにおける騒音トラブルについて解説します。

マンションでの騒音トラブル

近隣住戸から聞こえてくる大音量のテレビの音、ピアノやギターなど楽器の演奏音、あるいは夜中に発せられる大きな音や声などは、騒音トラブルの原因になりやすいもの。

しかし、実際に相談や苦情として多いのは、むしろ加害者とされる人が普通に暮らしているにもかかわらず響いてくるような音です。上階や隣の部屋から聞こえる足音や話し声などの生活音、あるいはペットの鳴き声なども問題になりがちです。

トラブルになる前に注意したいこと

注意しなければならないのは、入居者同士が加害者・被害者となり得る騒音問題は、深刻な事態に発展しかねないということです。お互いが感情的になりやすい問題でもあり、うまく落とし所が見つからなければ、住み続けることが苦痛になるかもしれません。訴訟問題やどちらかの引越しという結果になることも考えられます。

そのため、騒音被害に遭っていると感じたときは、すぐに直接本人に苦情を伝えるのではなく、まず第三者に相談するのがセオリーとされています。

まずは管理組合に相談を

分譲マンションの場合、まずは管理組合に相談するのが一般的です。管理組合の理事会に相談したり、総会で問題提起したりする方法があります。賃貸マンションの場合は、管理会社かマンションのオーナー(大家)に相談するケースが多いでしょう。
管理組合や管理会社が相談を受けると、まず騒音問題が起きていることをチラシ配布や掲示板で周知します。入居者に対して広く注意喚起し、騒音を出している本人にも気づいてもらうというのがその意図です。

それでも思ったような効果が得られなければ、管理組合や管理会社が第三者としてあいだに立ち、苦情が寄せられているという話を加害者に伝えることになるでしょう。その後、第三者の立ち会いのもと、当事者同士で話し合いをするケースもあります。

騒音トラブル1 上階の入居者が発する生活音など

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マンションでは、具体的にどのような騒音トラブルが起こっているのでしょうか。まず挙げられるのは、上階の入居者が発する、生活音などに関するトラブルです。
上階に住む人の足音や椅子を引く音などの生活音は、意外と大きく下の階に響きます。ある程度は仕方のない部分もありますが、子供がバタバタと走り回る音や、深夜に聞こえてくる物音、掃除機や洗濯機を使用する音などは、下階の人のストレスに結びつきやすいものです。

裁判に発展する事例も

例えば、上階で床を絨毯からフローリングに張り替えると、歩行音や椅子の音などの生活音が真下の階に、より響くようになります。
こういった例では、下階の人が騒音被害や生活妨害を受けたとして、慰謝料請求と絨毯張りへの復旧工事を求める訴えを起こした事例もあります。裁判では、絨毯張りへの復旧工事は認められなかったものの、慰謝料については支払いを命じる判決が下されました。

生活騒音にはどう対処するべきか

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では、生活騒音にはどう対処したらいいのでしょうか。裁判に持ち込む前に、管理組合なども介しつつ、当事者間で何らかの解決方法を見いだすのがベターです。

フローリングに張り替えた例での最も単純な解決方法は、上階の人がホームセンターで売っているようなクッション材、防音マットなどを床に敷くということ。また、本格的な防音工事を施す方法もありますが、費用も高くなり、どちらが負担するのかで問題になることもあります。

実際のところ、クッション材などに加えて日常の中で音を立てないよう気をつけるだけでも、騒音は軽減するものです。さらに、顔を合わせて話し合うことで、相手がどのような人かがわかれば、お互いに気遣いや配慮をする関係に近づける可能性も期待できます。

騒音トラブル2 ペットの鳴き声

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ペット可のマンションが増えるにつれ、ペットの鳴き声が騒音トラブルの原因として多くなってきました。特に問題になりやすいのは、犬の鳴き声です。

ペット可のマンションにはペットが嫌いな人もいる

ペット可のマンションだからといって、すべての住人がペットを飼っているわけではありません。ペットが好きではないという人が住んでいることもあります。そういう人にとって、時折鳴り響くペットの声は、我慢ならない音にも聞こえてしまうでしょう。

また、賃貸マンションの中には、以前はペット不可だったのが、入居者を集めるために途中からペット可に変わったというケースもあります。ペット不可を前提として住んでいた入居者の中には、急にマンション内から鳴き声が聞こえるようになって戸惑う人もいるでしょう。

ペットを飼っている側が防音対策を

この問題については、ペットを飼っている側が何らかの対策を施す必要があります。
例えば、ペットに対して小さい頃からしつけを行い、居室の壁や床に遮音シートや吸音材を貼るなどの防音対策を施すことなどが考えられます。ペットのいる居室を、隣の住戸と接していない居室にすることも有効です。

前提として、ペット可のマンションはもちろん、たとえペット共生型マンションであったとしても、周囲に対する配慮は必須と考えるべきでしょう。ペットによる騒音で訴えられ、損害賠償を命じられた事例は数多くあります。

これに対し、鳴き声に悩まされている側ができる対策は、あまり多くありません。最も確実な対策は、ペット不可マンションに引っ越すことです。または、管理組合などをあいだに挟んで、当事者同士の話し合いで解決していくしかないでしょう。

騒音トラブル3 近隣のリフォーム工事の騒音

マンションのリフォームや修繕工事は、かなりの騒音になります。特に、床リフォームによる騒音は、下階に大きく響きます。

マンション内での手続きをしっかり行うことが大切

ほとんどの分譲マンションでは、リフォーム工事に関する事前申請を行うよう、管理規約で定めています。工事を実施する際は、管理組合(理事会の理事長)に工事内容や期間について知らせて、許可を得なければなりません。

申請が認められたら、次に工事を請け負う業者の担当者と近隣の住戸へ、工事の挨拶に行きます。騒音が影響すると思われる10部屋くらいに、菓子折りなどを持って伺うのが通例です。
リフォーム工事の騒音については、これらの手続きと挨拶をしっかりと行うことが、最も重要かつ不可欠な対策となります。

どこからが騒音になる?

環境省が定める騒音に関する環境基準では、次のように音のレベルを定めています。

■環境省が定める騒音のレベル

地域 昼間(6~22時) 夜間(22~翌6時)
AA(医療施設・社会福祉施設などがある地域) 50dB以下 40dB以下
A(専ら住宅用の地域) 55dB以下 45dB以下
A(専ら住宅用で2車線以上の道路に面する地域) 60dB以下 55dB以下
B(主に住宅用の地域) 55dB以下 45dB以下
B(主に住宅用で2車線以上の道路に面する地域) 65dB以下 60dB以下
C(相当数の住宅と商業・工業用の地域) 60dB以下 50dB以下
C(相当数の住宅と商業・工業用で2車線以上の道路に面する地域) 65dB以下 60dB以下

※環境省「騒音に係る環境基準について」(2012年3月改正)

民事訴訟を起こして損害賠償などを請求したい場合は、騒音計を使用して騒音レベルを測定しておく必要があるでしょう。裁判にまで持ち込みたくはないという場合でも、客観的な騒音に関するデータがあれば、交渉の材料になります。

社会生活を営む上で、騒音・振動などによる被害の程度が我慢できる限界とされる範囲のことを、「受忍限度」といいます。裁判では、騒音による被害が受忍限度を超えているかどうかが、しばしば焦点のひとつとされます。

入居前に騒音についてチェックしておきたいポイント

入居前に騒音についてチェックしておきたいポイントについても知っておきましょう。

構造で防音性能を確かめる

一般的に集合住宅では、木造が最も近隣住戸の音が聞こえやすく、続いて鉄骨(軽量鉄骨・重量鉄骨)、その次にSRC造(鉄骨鉄筋コンクリート造)とRC造(鉄筋コンクリート造)の順に防音性能が高くなります。
また、同じRC造でも、ラーメン構造と呼ばれるフレームで支える構造の建物よりは、壁式構造と呼ばれる面で支える構造のほうが、音は響きにくい傾向があります。

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断熱材や床の状態で判断する

木造物件でも、壁にしっかりと断熱材が入っているような場合は、防音性や遮音性は高くなります。また、床はカーペットが最も遮音性が高く、次に遮音フローリング、通常のフローリングと続きます。
二重床、二重天井は防音効果があるように思えますが、これらは本来、リフォームをしやすくするための構造であり、防音性はあまり変わりません。

何度か下見をする

音の状況を確認するには、入居を検討している住戸に足を運んで下見をするのが最も確実です。下見が可能なのは中古マンションや賃貸マンションに限られますが、建物の構造だけではなく、上下左右の近隣住戸から聞こえてくるリアルな騒音を確認できるのがメリットです。
下見は一度だけではなく、できれば午前中と夕方、平日と週末など、何度か行くのが理想です。近隣住戸のライフスタイルや活動時間によっても、そこから発せられる騒音は違ってくるからです。

騒音トラブルの解決は普段のコミュニケーションから

マンションでの騒音トラブルの多くは、同じ集合住宅で暮らしている近隣住戸の人とのあいだで起きています。生活音、ペットの鳴き声、リフォーム工事の音など、それぞれ対策は異なりますが、「お互いに配慮し合う」という気持ちが大事なのは変わりありません。
顔を知っている者同士であれば、聞こえてくる音に対する印象も変わってきます。プライバシーなどの問題もありますが、普段からコミュニケーションをとることも含めて、騒音の対策を考えてみましょう。

監修者:髙野友樹
株式会社 髙野不動産コンサルティング代表取締役。公認不動産コンサルティングマスター、宅地建物取引士。不動産会社にて仲介、収益物件管理に携わった後、国内不動産ファンドにてAM事業部マネージャーとして勤務。2014年、株式会社髙野不動産コンサルティングを創業。

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