同じように見える建物でも、マンションと表記されているものもあれば、アパートと表記されているものもあります。マンションとアパートには具体的にどのような違いがあるのか、疑問に思う人もいるでしょう。
ここでは、マンションとアパートの違いや、それぞれのメリット・デメリットのほか、どのような人が向いているのかを解説します。
マンションとアパートはどう区別する?
日本における集合住宅は、マンションとアパートが多くを占めています。しかし、マンションとアパートが具体的にどう違うのかを理解せずに、イメージだけで物件を探している人もいるでしょう。
まずは、マンションとアパートにはどのような違いがあるのかについて解説します。
マンションとアパートに明確な違いはない
結論からいうと、マンションとアパートの区分について、明確な基準は設けられていません。不動産の登記簿謄本にも、建物の構造や階層、面積などは記載されますが、マンションやアパートなどの区分はされていないのです。
一方で、不動産業界では、マンションとアパートを区別するための判断基準を設ける会社が多くあります。
不動産業界における一般的な判断基準は?
不動産会社やハウスメーカー、ポータルサイトなど、物件を取り扱う不動産業界では、マンションとアパートの判断基準を設けている企業が多くあります。マンションとアパートを区別するための社内規定を定めており、指標となるのは建物の構造や階層、建築材料などで、企業によってその基準も異なります。
一般的には、建物の構造によって次のようにマンションとアパートは区別されています。
- マンション
鉄骨鉄筋コンクリート造や鉄筋コンクリート造、鉄骨造の建物 - アパート
木造やプレハブ造、軽量鉄骨造の建物
ただし、これはあくまで一般的な判断基準にすぎず、木造や軽量鉄骨造の賃貸でも「◯◯マンション」と表記しているところもあります。
部屋探しでは建物の構造を確認
このように、マンションとアパートには区分のための明確な定義がありません。そのため、賃貸物件探しをする際は、ウェブサイトやチラシに記載されている建物の名前や種別だけで判断するのではなく、構造もしっかり確認することをおすすめします。
マンションのメリット・デメリット
ここからは、建物の構造で区分した場合のマンションとアパートについて、それぞれのメリットとデメリットを見ていきましょう。
まずは、マンションのメリットとデメリットをご紹介します。
マンションのメリット3つ
マンションのメリットは、その建築構造によるところが大きいといえるでしょう。具体的には、次のようなメリットが考えられます。
- 防犯性が高い
- 防音性・遮音性が高い
- 耐震性や耐火性に優れている
以下、それぞれ説明していきます。
・防犯性が高い
マンションはオートロックや防犯カメラなど、セキュリティ設備が充実している物件が多く、防犯性が高いというメリットがあります。高層マンションの上層階であれば、窓からの侵入が難しいという点でも安心です。
・防音性・遮音性が高い
コンクリートや鉄筋による重厚な造りとなっているマンションなら、防音性や遮音性にも優れています。一般的なマンションであれば、特に大きな音でない限り、隣や上下階の生活音も気になるほどではないでしょう。
・耐震性や耐火性に優れている
建物の構造上、マンションは比較的耐震性が高いというメリットもあります。木造やプレハブ造と比べて、耐火性にも優れています。
マンションのデメリット2つ
マンションは、その建築構造によるメリットがある一方で、それがデメリットとなってしまうこともあります。具体的なマンションのデメリットは主に次の2つです。
- 家賃等が高め
- 物件によっては定期的な換気が必要
それぞれ解説します。
・家賃等が高め
鉄筋構造の建物は木造よりも建築コストが高くなるため、家賃も高くなる傾向があります。
また、高層のマンションではエレベーターの設置が必要だったり、オートロックなど防犯面でも優れた設備を設置したり、管理費や共益費も高めに設定されていたりする物件も多く見られます。そのため、家賃と管理費・共益費などを合わせると、毎月高額な支払いをすることになってしまいます。
・物件によっては定期的な換気が必要
マンションには、定期的な換気が必要な物件もあります。マンションは、一般的に建物の気密性が高いという特徴があり、特に鉄筋コンクリート造のマンションは、外気との温度差によって結露が発生しやすいのです。そのため、定期的に換気をしてカビの発生を防がなければなりません。
2003年に行われた建築基準法の改正に伴って、2003年以降に建てられた建物は24時間換気の設備が義務づけられました。しかし、それ以前の建物についてはこまめな換気が必要となる場合があるため、注意が必要です。
一方で、24時間換気の設備があるマンションは、外気を取り入れるため冬場は寒く感じやすいという側面もあります。
アパートのメリット・デメリット
ここからは、アパートと表記される建物のメリットとデメリットについて見ていきましょう。
アパートのメリット2つ
アパートと表記される建物は、一般的に木造やプレハブ造であることが多く、その構造によるメリットとして主に2つ挙げられます。
- 家賃が安い
- 通気性が良い
この2点について解説します。
・家賃が安い
木造や軽量鉄骨など、マンションに比べて建築コストが抑えられるアパートは、全体的に家賃も安い傾向があります。大型の建物になることは少なく、エレベーターや駐車場などの設備コストも抑えられるため、管理費や共益費もマンションより安めに設定されています。
・通気性が良い
木造のアパートはマンションに比べて通気性に優れており、ある程度の吸湿性もあるため、結露が発生しにくいというメリットもあります。
木造の建物は鉄筋コンクリート造などと比較して断熱性に優れているため、寒い冬でも過ごしやすい環境を確保できるでしょう。
アパートのデメリット2つ
続いては、アパートのデメリットについて見ていきましょう。
- セキュリティに不安がある
- 遮音性が低い
この2点について、以下解説します。
・セキュリティに不安がある
低層の建物が多いアパートは、マンションと比べてセキュリティの面で不安な部分があります。
アパートによっては、オートロックなどの防犯設備がない物件もあり、窓やベランダから侵入される可能性もマンションより高くなります。特に、女性の一人暮らしの場合は、セキュリティには十分注意したいところです。
・遮音性が低い
遮音性が低いことも、アパートのデメリットのひとつです。木造や軽量鉄骨造のアパートの場合、隣の部屋や上下階へ音が伝わりやすくなっています。
また、昼夜が逆転して生活している人や、小さな子供のいる家庭なども、生活音がほかの住人の迷惑になってしまう可能性があります。
マンション・アパートに向いている人とは?
ここまでご紹介したマンションとアパートの特徴を踏まえて、それぞれどのような人に向いているのかをまとめました。マンション、アパート選びの参考にしてください。
家賃が高くても設備を重視したい人はマンション
何よりも設備を重視したい人は、マンションを選ぶことをおすすめします。騒音やセキュリティ面を気にせず快適に暮らしたいという人は、マンションを中心に探してみるといいでしょう。
小さい子供のいる家庭や、夜遅くにも家事や作業をする可能性のある人などは、特に遮音性の高さを重視したいところです。また、防犯性を優先したい人は、高層階の部屋でオートロックや防犯カメラなどの設備があるマンションがいいでしょう。
とにかく家賃を抑えたい人はアパート
とにかく家賃を抑えたい人は、アパートを選ぶといいでしょう。アパートは、家賃だけでなく共益費、管理費がマンションよりも安めに設定されているため、設備面はさほど気にせず家賃を抑えたい人に向いています。
また、アパートは一棟あたりの戸数も少ないため、アパート内で同じ住人と顔を合わせる頻度も高くなります。そのため、近所づき合いが苦にならない人のほうが、アパートではストレスなく生活できるでしょう。
マンションとアパートの表記だけでなく構造も確認しよう
不動産業界では、建物の構造によってマンションとアパートが区分されていますが、それ以外に区別するための明確な基準はありません。そのため、部屋探しをする際には、建物の構造も確認することが大切です。
部屋を探す際には、どのような部屋に住みたいか、希望条件をリストアップした上で、建物の構造についても確認してみましょう。
監修者:髙野友樹
株式会社 髙野不動産コンサルティング代表取締役。公認不動産コンサルティングマスター、宅地建物取引士。不動産会社にて仲介、収益物件管理に携わった後、国内不動産ファンドにてAM事業部マネージャーとして勤務。2014年、株式会社髙野不動産コンサルティングを創業。