マンションはいつ建て替えが必要?おおよその費用と流れを解説


分譲マンションの場合、賃貸とは異なりマンションは所有者の資産となります。しかし、マンションは年数が経てば老朽化し、建て替えなければならないケースも出てくるでしょう。
建て替えが決まった場合、その費用は誰が負担するのか、いつ建て替えたらいいのかといったことが気になる人もいるのではないでしょうか。マンションを購入した後で失敗したと思わないためにも、あらかじめ建て替えについても把握しておきたいところです。

そこで、分譲マンションの建て替えについて、どのようなマンションが建て替えの対象となるのか、居住者はどのくらい費用を負担するのかといったことを見ていきましょう。建て替えの流れや、マンション選びのポイントについても併せてご紹介します。

老朽化したマンションは建て替えが必要に

マンションは、老朽化などを理由に建て替える必要性が出てきます。まずは、分譲マンションを建て替える主な理由や、費用の内訳について見ていきましょう。

設備が老朽化したら建て替えることも

鉄筋コンクリート造(RC造)のマンションは、法定耐用年数が47年と定められています。しかし、これはあくまでも税法上の減価償却のための年数で、実際には47年で建て替えをしなければいけないわけではありません。

ただし、建物そのものは問題なくても、設備の老朽化を理由に建て替えるケースもあります。特に電気・水道・ガスといったライフラインの設備に問題がある場合、建て替える必要性が出てくるでしょう。また、耐震性の低いマンションも、安全性を考慮して建て替えが進んできています。

このような設備面を理由とする場合、築年数にかかわらず建て替えが必要です。例えば、1960年代以降に一般的な住宅として普及したマンションは、築30年程度で建て替えとなったものが多くあります。耐震性能などを重視していなかった時代に建てられたため、老朽化していなくても、建て替え対象となってしまうのです。

建て替えるには一定数の賛成が必要

マンションの建て替えは、管理組合や一部の所有者だけで決められるものではありません。マンションを建て替えるためには、区分所有法にもとづいて、そのマンションに住んでいる世帯(区分所有者)の5分の4以上の賛成が必要となります。
その際、5分の4に満たなければ建て替えることはできません。このような理由もあり、5分の4以上の賛成が得られず、建て替えできないまま老朽化が進んでしまうマンションもあります。

建て替える場合は住民負担となる

マンションを建て替えるにあたって、賛成を得られない主な理由としては、建て替え費用が所有者負担となることが挙げられます。
マンションを購入したことで、そのマンションの区分は所有者の資産となります。そのため、建て替える場合も、その費用を負担するのは所有者となるのです。

マンションの建て替え費用は、設備のレベルや修繕積立金の積立額などによっても異なりますが、一般的には1戸あたり1,000万~2,000万円程度が目安となるでしょう。
建て替え費用以外にも、建て替え工事中の引越し費用や仮住まいの賃料なども発生します。このような諸費用も加算した上で、建て替えにかかるコストを把握しなくてはなりません。

売却して立ち退くことも選択肢のひとつ

マンションを建て替える場合、売却という選択肢もあります。必ずしも、建て替えたマンションに戻る必要はありません。建て替えを機にマンションを売却して、新たに中古マンションを購入するという人も少なくありません。

また、高齢者の場合、高齢者向け返済特例制度が活用できます。これは、60歳以上の人を対象に1,000万円まで融資し、毎月の返済は利息のみ。元金は本人の死亡後に住宅と敷地を処分して支払うか、相続人が一括返済するかを選べるという制度です。
このような制度があることも踏まえて、建て替え後にマンションへ戻るか、売却するかを選択することをおすすめします。

マンション建て替えの選択肢

マンション建て替えの流れ

ここからは、マンションを建て替える際の検討の流れを、4つのステップに分けて見ていきましょう。

Step1 管理組合で建て替えを検討

まずは、建物や設備の老朽化を踏まえて、建て替えをすべきか否か、管理組合で話し合います。建て替え検証を経て、建て替えについて具体的に検討を進めることを決めるための決議である「建て替え推進決議」を、管理組合が行います。

Step2 修繕で対応可能か検討

建て替えを本格的に検討する中で、修繕で対応可能かどうかも話し合います。特に、耐震性に問題がない場合は、外壁塗装や鉄部塗装、屋上防水工事、給水管工事、排水管工事などの小規模修繕で対応できないか検討します。小規模修繕は建て替えよりも費用を抑えられるということもあり、所有者からの賛成も得やすくなるでしょう。

Step3 建て替え計画を作成

ここからは、建て替え計画を作っていきます。マンションの外装デザインや間取りなどが具体的に決められ、実現できる範囲で建て替え計画を作成します。
具体的な計画案ができたら、建て替え決議を実施。完成した計画案をもとに、区分所有者および議決権の5分の4以上から賛成を得られれば、いよいよ建て替えとなります。

Step4 マンション建て替え組合を設置

次に、建て替えの段階に入ります。マンション建て替え組合を設置して、住宅ローンの抵当権の引き継ぎをしたりします。
また、既存のマンションから新しいマンションへ権利変換が行われます。これで権利関係が確定し、マンションの建て替え工事を開始することができるのです。

マンション建て替えの流れ

建て替え回避には寿命の長いマンションを購入する

マンション購入後に、建て替え費用で思わぬ支出が発生してしまうことはできるだけ避けたいところでしょう。建て替えのリスクを少しでも軽減したい場合は、しっかり修繕や管理が行われているかを確認し、建物や設備の寿命が長いマンションを選ぶことが大切です。

修繕が適切に行われているか

マンションの維持管理のためには、長期的な修繕計画と、修繕資金の積立が欠かせません。マンションを購入する際には、この2点が適切に行われているかを忘れずに確認しましょう。
修繕積立金とは、マンションの修繕工事などにあてられる費用で、将来必要となる大規模な修繕工事のために積み立てておくものです。所有者が毎月決まった金額を支払うもので、現状の相場としては1万~2万円くらいでしょう。

専門家に住宅診断をしてもらう

マンションの寿命を見極めるには、新耐震基準に適合している建物かどうか、管理状態が行き届いており、老朽化が進んでいないかといったことを確認する必要があります。
不動産に関してある程度専門的な知識が必要となるため、判断が難しい場合は、建築や建て替えの専門家に相談したり、住宅診断をしてもらったりするといいでしょう。

建て替えの必要性も考慮したマンション選びを

マンションを購入してすぐに、建て替えの負担が発生してしまうようなリスクを避けるためにも、購入を検討中のマンションの寿命や毎月の修繕積立金、管理状態などをしっかりと把握しておくことが大切です。
また、将来必要となる建て替えに備えて、余裕を持って資金を準備しておく必要もあります。判断が難しければ専門家に相談して、マンション選びで失敗しないようにしましょう。

監修者:髙野友樹
株式会社 髙野不動産コンサルティング代表取締役。公認不動産コンサルティングマスター、宅地建物取引士。不動産会社にて仲介、収益物件管理に携わった後、国内不動産ファンドにてAM事業部マネージャーとして勤務。2014年、株式会社髙野不動産コンサルティングを創業。

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