マンション購入時の頭金とは?金額の目安と注意点を解説


マンションを購入する際は、金額の一部を頭金として支払い、残りをローンで支払うことが一般的です。しかし、頭金として必要な額はどれくらいなのか、いったいどれくらい用意すればいいのか、疑問に思っている人も多いでしょう。
頭金ゼロで購入できる物件も出てきていますが、ここでは、頭金の意味とマンション購入時に必要な頭金の目安のほか、マンション購入時の頭金の注意点についてご紹介します。

マンション購入時に頭金を支払うメリット2つ

マンションの頭金とは、購入の際にローンを利用する場合、最初に支払うまとまった金額のことです。一般的には、物件価格から頭金を引いた分が、住宅ローンで借り入れる金額となります。

マンションの頭金

マンションの購入代金を全額住宅ローンで借り入れれば、頭金ゼロでもマンションを買うことは可能です。それにもかかわらず、多くの人が頭金を用意するのは、以下のように毎月の返済額が抑えられたり、住宅ローンの審査が通りやすかったりするというメリットがあるからです。

  • 頭金の分だけローン借入額が減る
  • ローンの審査が通りやすくなる

これらのメリットについて紹介します。

頭金の分だけローン借入額が減る

頭金を支払うと、その分だけローンの借入額が減りますので、毎月の返済負担を抑えることができます。
例えば、住宅金融支援機構の長期固定型金利住宅ローンであるフラット35を利用して、3,000万円のマンションを買ったときの返済額を、次の3パターンで比べてみましょう。

■頭金別・3,000万円のマンションを購入した場合の総返済額比較

  借入額 全期間金利 毎月返済額 総返済額
頭金300万円 2,700万円 1.3% 8万50円 3,362万1,000円
頭金100万円 2,900万円 1.56% 8万9,648円 3,765万3,000円
頭金ゼロ 3,000万円 1.56% 9万2,739円 3,895万1,000円

※金利は2020年7月時点のもの。返済期間35年で元利均等返済の場合。総返済額の1,000円以下は切り上げ。

毎月返済額と総返済額は、以下のような計算式で求められますが、複雑で手間がかかるためローンシミュレーターなどを利用するのがいいでしょう。

毎月返済額=借入額×(月利(1+月利)返済回数÷(1+月利)返済回数-1)
総返済額=毎月返済額×返済回数

フラット35では、借入金額がマンション価格の9割以下になると住宅ローンの金利が下がるため、頭金を300万円用意した場合は、頭金ゼロに比べて毎月返済額が1万円以上安くなっています。
マンション購入代金での頭金の割合が高くなると、金利が下がるサービスを行っている金融機関は多くあります。頭金を多く支払えば、おおよそどの金融機関でもローンの負担は減る仕組みになっています。

ローンの審査が通りやすくなる

頭金が準備できる人は、住宅ローンを提供する金融機関からすると、計画的に貯蓄ができ、信用できる人だといえます。例えば、年収600万円の人が300万円の頭金を支払ったとして、3年間で300万円を貯めたのであれば、収入の15%以上を3年間貯蓄できる人という信用につながります。金融機関が、ローン返済に問題ない人と判断する材料になるため、審査に通りやすくなるのです。

マンション購入に頭金はどれくらい必要?

月々の返済額を抑えるなら、頭金は多ければ多いほど良いといえそうです。しかし、多額の頭金を用意することは現実的ではありません。一般的には、頭金は物件価格の20%程度が妥当だといわれています。
2019年7月に公開された、2018年度のフラット35利用者調査を見ると、新築マンションの購入価格の全国平均は約4,437.2万円。うち、手持ち資金で支払った分は約714.1万円で、約16%となっています。

参考までに、3,000万円と4,000万円の物件をそれぞれ20%の頭金で購入した場合、フラット35での毎月の返済額は次のようになります。

■3,000万円と4,000万円のマンションを頭金20%で購入した場合の返済額比較

購入した物件の価格 頭金 借入額 全期間金利 毎月返済額 総返済額
3,000万円 600万円 2,400万円  1.3% 7万1,115円 2,988万6,000円
4,000万円 800万円 3,200万円 1.3% 9万4,874円 3,984万7,000円

※金利は2020年7月時点のもの。返済期間35年で元利均等返済の場合。総返済額の1,000円以下は切り上げ。

このように、全体としては頭金を用意するほうが主流といえますが、頭金なしで購入価格全額を住宅ローンで借り入れるフルローンが使える場合もあります。頭金があれば月々の返済負担が減ることは確かですが、頭金を貯めるには何年もかかるため、購入したい物件の売出し時期とタイミングが合わないかもしれません。
マンション価格が値下がりしたり、住宅ローンの金利が安かったりするタイミングを逃さずに購入するには、時間をかけて頭金を貯めるより、頭金ゼロで住宅ローンを組んだほうがいい場合もあるのです。

ただし、頭金ゼロでの住宅ローン申込みは、頭金ありの場合に比べて審査が厳しくなる傾向があり、思いどおりの融資を受けられない可能性も高まります。その点には注意してください。

マンション購入時における頭金の注意点2つ

頭金は物件価格の20%程度というのはあくまでも目安で、実際にいくら用意すべきかはケースバイケースです。次の2つの点に注意して、頭金の額を決めていきましょう。

  • 頭金ゼロの場合のリスク
  • マンション購入後の生活

頭金ゼロの場合のリスク

頭金ゼロで全額を住宅ローンで借り入れるリスクは、なんといっても月々の返済の負担が大きくなることです。一般的に、住宅ローンの年間返済額の上限は、年収の25%といわれています。無理なローンを組んでしまうと、転職などで収入が減少した場合、毎月の返済が大きな負担となりかねません。

また、住宅ローンで購入した物件には抵当権が残っており、何らかの理由でローンの返済が滞ると金融機関はそのマンションを処分できることになっています。マンションを売却しようとしても、ローンの借入残高がマンションの売却価格を上回っている場合、足りない分を返済しなければなりません。
頭金がゼロの場合、マンションを売却しようとしても借入残高が多く、住宅ローンを完済できないリスクがあることも理解しておきましょう。

マンション購入後の生活

頭金をどれくらいに設定するかを検討する際には、マンション購入後の生活のことも考慮しましょう。頭金の額が多ければ多いほど、その後のローン負担は小さくなりますが、かといって貯金全部を頭金の支払いにあててしまうのは早計です。

マンションを購入する際は、頭金のほかにも不動産会社に支払う仲介手数料などの諸経費がかかることを忘れてはいけません。また、貯金がゼロになってしまうと、病気になってしまったり、仕事を辞めることになったりしたときに対応することが難しいでしょう。

現在は低金利なので、頭金を増やして借入金額を抑える意味は、以前と比べて小さくなっています。マンション購入にかかる諸経費と、何かあったときに備える3~6ヵ月分の生活予備費、将来の教育資金などを貯金額から引いた額で、無理なく頭金を用意しましょう。

頭金と貯金額

自分に合った頭金の額を考えよう

一般的に、マンション購入時の頭金の額は購入価格の20%といわれていますが、この数字は目安であって絶対ではありません。余裕があれば頭金を増やすことでローンの返済負担を減らすことができますし、頭金ゼロで全額ローンにしたほうがタイミングを逃さずにいいという場合もあります。
今回ご紹介した頭金の仕組みを参考に、ご自身に合った頭金の額を検討してみてください。

監修者:髙野友樹
株式会社 髙野不動産コンサルティング代表取締役。公認不動産コンサルティングマスター、宅地建物取引士。不動産会社にて仲介、収益物件管理に携わった後、国内不動産ファンドにてAM事業部マネージャーとして勤務。2014年、株式会社髙野不動産コンサルティングを創業。

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