マンション投資は本当に節税になる?仕組みと注意点を解説


所得税や住民税など、国民の義務として納めなければならない税金。できることなら節税をして、税金の負担を軽くしたいものです。その節税方法のひとつとして、マンション投資を考える人もいるでしょう。
確かに、マンション投資は節税効果が見込めるケースもあります。しかし、ただマンション投資をするだけでなく、なぜマンション投資で節税できるのか、その仕組みを知った上で節税対策をしなければなりません。
ここでは、マンション投資における節税の仕組みと注意点について解説します。

マンション投資で節税できる仕組み

マンションを所有していると、さまざまな税金を支払うことになりますが、マンション投資をすることでどんな税金を節税できるのでしょうか。その仕組みについてご紹介しましょう。

所得税の節税

マンション投資で節税できる税金は所得税です。マンション投資で得られる家賃などの収入は、会社員の給与所得と同じ、総合課税である不動産所得として取り扱います。この不動産所得から、不動産を取得するための費用や投資物件の運用のためにかかった修繕費用などの経費を差し引いた金額に対して、所得税が課税されるのです。

しかし、物件を購入する初年度は、初期費用がかかります。また、マンションの価格に対しての減価償却費も高額となるため、マンション投資の収入よりも経費が上回り、赤字になることも珍しくありません。
この場合、総合課税に分類された給与所得(会社員の給料など)から、マンション投資の赤字分を相殺することが可能です。この仕組みを損益通算といい、マンション投資の損失分を給与所得から差し引くことができれば、全体の所得額は減ることになります。結果として、所得税を減らすことにつながるのです。

■損益通算の仕組み

損益通算の仕組み

住民税の節税

住民税も、マンション投資によって節税することができます。住民税は、所得額をもとに計算されているため、所得額を減らせれば、結果的に住民税も減ることになります。

マンション投資の節税は確定申告が必要

マンション投資で節税するためには、確定申告が必要になります。間違いなく確定申告をするために、知っておきたいポイントについて見ていきましょう。

マンションの耐用年数を確認

マンション投資で節税するためには、確定申告で減価償却費を計上する必要があります。減価償却費とは、マンションなどの不動産の取得費用を、定められた耐用年数に応じて分割し、経費として計上したものです。

土地は、基本的には経年劣化などによる価値の減少がないため、減価償却費の計上はできません。一方、建物はその構造によって耐用年数が定められており、この耐用年数で分割した金額を経費として計上します。

建物の構造別に定められた耐用年数は、以下のとおりです。

■建物の構造別の耐用年数

建物の構造 耐用年数
鉄筋コンクリート(RC)造 47年
鉄骨造 34年
軽量鉄骨造(厚さ3mm以下) 19年
木造 22年

減価償却費の計算方法

次に、耐用年数をもとに減価償却費を計算します。減価償却費は次の計算式で求められます。

減価償却費=建物の取得価額×償却率

償却率は耐用年数をもとに決められており、国税庁の資料から確認することができます。
3,000万円で購入した築15年の鉄筋コンクリート(RC)造のマンションを例に、減価償却費の計算方法を解説しましょう。

まず、償却率を求めるために、マンションの残存耐用年数を出す必要があります。法定耐用年数47年からただ15年を引けばいいわけではなく、次の計算式に当てはめて計算しなければなりません。

耐用年数=法定耐用年数-築年数×80%

今回の例では47年-15年×80%となり、残存耐用年数は35年です。建物は毎年一定額を計上する定額法償却率が適用になるため、35年の償却率は0.029になります。減価償却費の計算式に当てはめると、減価償却費は次のように求められます。

3,000万円×0.029=87万円

この減価償却費を確定申告で計上することで、全体の所得額から差し引くことができ、所得税を減らすことができるようになります。

マンション投資にかかる経費を計上

減価償却費は節税にあたって大きい金額となりますが、ほかにも計上できる経費を忘れてはいけません。経費を多く計上するほど課税所得金額が減るため、所得税を減らすことができます。どのような費用を経費として計上できるのかを理解しておきましょう。
減価償却費以外に、マンション投資で経費計上できる項目は下記のとおりです。

  • 管理費
  • 修繕費
  • 修繕積立金
  • 管理会社への委託料
  • ローンの利息
  • 各種税金
  • 各種保険料
  • そのほかの経費

それぞれについて説明していきます。

・管理費
管理費は、マンション管理にかかる費用です。清掃や設備の保守点検費用のほか、消防設備の法定点検費用などがあります。

・修繕費
修繕費は、部屋のクリーニング代や破損部分を修繕した際にかかる費用です。そのほか、マンションの設備を維持するためのメンテナンス費が含まれます。

・修繕積立金
修繕積立金は、建物の経年劣化による修繕が必要になったときに備えて積み立てておく費用です。修繕積立金も経費として計上できます。

・管理会社への委託料
管理会社への委託料は、マンションの管理を委託している管理会社に支払うものです。家賃の数%を支払うことが一般的です。

・ローンの利息
ローンを組んでマンションを購入した場合は、建物にかかるローンの利息分を経費として計上できます。ただし、元金の返済分は経費に含まれません。

・各種税金
マンション購入時にかかった各種税金を経費として計上できます。印紙税や不動産取得税、毎年納付する固定資産税、都市計画税などが対象です。

・各種保険料
自然災害による損害に備える火災保険や地震保険などの保険料も、経費として計上することが可能です。

・そのほかの経費
ほかにも、マンション投資をする上でかかった費用は、経費に含めることができます。
例えば、不動産運営に関する打ち合わせにかかった旅費交通費や、不動産投資に関係する書籍や新聞を購入した場合の新聞図書費、税理士費用などが挙げられます。

マンション投資による節税の注意点

これまでに説明した節税の仕組みを理解した上で、ほかにもマンション投資で注意しておきたい点があります。節税を目的としてマンション投資をするべきかどうか、注意点を確認して考えてみてください。

マンション投資の収入や経費は一定ではない

マンション投資による収入や経費はその年によって異なり、一定ではないということを理解しておきましょう。
マンションを購入した年は、不動産取得税や諸費用がかかるため節税できる可能性はありますが、2年目以降に大きな経費として計上できるものは多くありません。一般的には、不動産取得にかかった減価償却費やマンション購入にローンを組んだ場合の借入金の利息や、打ち合わせにかかった旅費交通費・接待交通費くらいでしょう。

節税を目的とした投資はおすすめしない

マンション投資で節税できるということは、マンション投資による収入が赤字だということです。基本的には不動産所得で赤字となった場合に、損益通算することで全体の所得を減らし、所得税が減ることになります。税金上では納税額を減らせて節税できたとしても、マンション投資だけを見ると赤字の状態であることに変わりありません。

そのため、マンション投資で節税を目指すよりも、マンション投資を通して収入源を作ることを目的としたほうが現実的といえます。そのほうが、結果として資産を増やせる可能性が高くなるといえるでしょう。

マンション投資は節税よりも収入アップを目指そう

マンション投資をすることで、所得税や住民税の節税ができるケースもあります。しかし、節税できたとしても、マンション投資が赤字状態のままでは本末転倒です。
計画的なマンション投資をしなければ、空き室が増えたり、資金繰りができなくなってしまったりするリスクもあります。節税を第一の目的とはせず、収入アップにつながるマンション投資を目指しましょう。

監修者:髙野友樹
株式会社 髙野不動産コンサルティング代表取締役。公認不動産コンサルティングマスター、宅地建物取引士。不動産会社にて仲介、収益物件管理に携わった後、国内不動産ファンドにてAM事業部マネージャーとして勤務。2014年、株式会社髙野不動産コンサルティングを創業。

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