マンション投資をおこなうにあたって、利回りは必ずチェックすべきポイントです。しかし、利回りがどれくらいなのかがわかっても、それが高いのか安いのかの判断は難しいところ。
ここでは、マンション投資の利回りの計算方法や利回り平均、理想の利回りのほか、マンション投資で利回りを考える際に注意したいポイントについて解説します。
マンション投資の利回りと計算式
マンション投資の利回りとは、マンション取得費用など、投資した金額に対する収益の割合を数値化したものです。一般的には、1年間の年利回りのことを利回りと呼んでいます。
計算方法によって、表面利回り、想定利回り、実質利回りの3種類があります。
表面利回り
表面利回りは、単純にマンションの取得にかかった費用に対し、1年間の家賃収入の割合を表したものです。税金や管理費といった、不動産の維持に必要な経費は含みません。
表面利回りは、次の計算式で求められます。
表面利回り=現在得られている年間家賃収入÷マンションの購入価格×100
例えば、1部屋の家賃が10万円のワンルームマンションを3部屋所有しており、この物件の購入価格が7,000万円だったとします。
この条件で、1年間満室だった場合の表面利回りは、下記のようになります。
(家賃10万円×3部屋×12ヵ月)÷7,000万円×100=約5.1%
表面利回りは、不動産の収益率を大まかに知りたい場合に使うと便利です。
想定利回り
想定利回りとは、物件が常に満室だという前提での利回りのことです。
想定利回りは、次の計算式で求められます。
想定利回り=1年間満室だった場合の想定家賃収入÷マンションの購入価格×100
現実的には常に満室ということにはならないため、想定利回りはあくまで想定です。また、表面利回りと異なり、複数区分のあるマンションを一棟買いする場合、最も高い家賃をもとに全室満室である前提で計算されていることがあるため、注意が必要です。
想定利回りは参考程度に見ておくといいでしょう。
実質利回り
実質利回りとは、マンションの維持にかかる経費や、マンション購入時の諸経費などの支出も反映した利回りです。
実質利回りは、次の計算式で求められます。
実質利回り=(1年間の家賃収入-諸経費)÷(マンションの購入価格+購入時諸経費)×100
例えば、1部屋の家賃が10万円のワンルームマンションを3部屋所有しており、年間の諸経費などで年間50万円の費用がかかるとします。また、この物件の取得価格が7,000万円で、購入時諸経費が100万円とした場合、実質利回りは、下記のようになります。
(家賃10万円×3部屋×12ヵ月-50万円)÷(7,000万円+100万円)×100=約4.4%
年間の諸経費には、管理会社に支払う管理費や共用部の光熱水道費、設備のメンテナンス費用、マンションの火災保険料が含まれます。
購入時諸経費は、不動産登記費用やローン事務手数料、印紙税などです。不動産維持にかかる支出も反映しているため、より正確な収益率を知ることができます。
なお、不動産会社の投資マンション広告に掲載されているのは、ほとんどの場合が想定利回りか表面利回りです。
実質利回りとは金額の開きが出てくるため、利回りを確認する際には、どの利回りを表したものなのか注意しましょう。
マンション投資の平均利回りと理想の利回り
マンション投資においては、取得価格が高い新築物件の利回りのほうが、中古物件の利回りより低くなるのが一般的です。また、都市部のマンションは地方に比べて購入価格が高くなることが多いため、地方の物件に比べれば利回りが低くなりがちです。
では、具体的にマンション投資の平均利回りは、どれくらいなのか見ていきましょう。
マンションの実質利回り相場は3~6%前後
平均的な区分マンション1室の実質利回り相場は、新築で3~4%前後、中古で6%前後が目安といわれています。
一般財団法人日本不動産研究所の「第42回不動産投資家調査(2020年4月現在)」によると、ワンルームタイプ、ファミリー向けタイプの期待利回り(購入後に期待される年間家賃収入をマンション購入価格で割った数値)は下記のとおりです。
■地域別ワンルームタイプ、ファミリー向けタイプの期待利回り
地区 |
ワンルーム |
ファミリー向け |
東京・城南地区(品川区、目黒区など) |
4.2% |
4.3% |
東京・城東地区(墨田区、江東区など) |
4.5% |
4.5% |
札幌 |
5.5% |
5.6% |
仙台 |
5.5% |
5.7% |
横浜 |
4.9% |
5.0% |
名古屋 |
5.0% |
5.2% |
大阪 |
4.8% |
5.0% |
広島 |
5.7% |
5.8% |
福岡 |
5.1% |
5.2% |
理想の利回り
表面利回りや実質利回りは、どちらも1年間の家賃収入を入居率100%として計算したものです。しかし、実際には入居率100%になるわけではありません。借り手がいないあいだは家賃収入がゼロになり、利回りが下がってしまうことが考えられます。
そのため、地域平均の実質利回りより、1~2%程度高くなっているのが理想といえるでしょう。
また、都市部の物件は取得価格が高い分、表面利回りや実質利回りが低くなりがちです。しかし、借り手が多いため、実質利回りと実際の利回りとの乖離が少ない傾向があります。
一方、地方の物件は取得価格が低い分、表面利回りや実質利回りは高くなりがちですが、借り手が少ないため、実際にはそれほど高い利回りが得られないケースが少なくありません。
マンション投資の利回りを考えるときに注意すべき3つのポイント
広告では高利回りがうたわれていても、実際の利回りとの乖離が激しい場合があります。そのため、マンション投資では、実際の利回りはどれくらいあるのかをチェックすることは欠かせません。ポイントとなるのは、下記の3つです。
- 実質利回りで物件を判断する
- 空き室を考慮する
- マンションの状況を確認する
これらのポイントについて解説しましょう。
1 実質利回りで物件を判断する
マンションを維持・管理するには、管理会社に支払う委託管理費や固定資産税、メンテナンス・修繕費など、さまざまな費用がかかります。これらの支出も考慮しなければ、実際にどれくらいの利回りになるのかはわかりません。
投資用マンションの広告で見かける数字は、ほとんどが想定利回りか表面利回りで、これらの支出は計算されていないことに注意しましょう。目先の数字に惑わされず、実質利回りで物件を判断する必要があります。
2 空き室を考慮する
実質利回りは参考になる数字ですが、入居率100%を前提として計算しているため、実際の入居率は反映していません。
例えば、1部屋の家賃が10万円のワンルームマンションを3部屋所有しており、年間の諸経費などで年間50万円の費用がかかるとします。また、この物件の取得価格が7,000万円で、購入時諸経費が100万円とした場合の実質利回りは、約4.4%です。
これは入居率100%を前提にしていますが、入居率が70%しか見込めない場合の計算は次のようになります。
(家賃10万円×3部屋×12ヵ月×70%-50万円)÷(7,000万円+100万円)×100=約2.8%
入居率が100%の場合の実質利回りは約4.4%なので、入居率を70%とすると、利回りは約1.6%の差が出てしまいます。より現実的な利回りを出したい場合は、入居率を想定した実質利回り計算もおこなってみましょう。
3 マンションの状況を確認する
利回りが高いマンションの中には、何らかの理由があって物件価格が安いだけの場合もあります。そういったマンションでは、入居者がなかなか見つからず、空き室期間が長くなって収益が得られないことも考えられるでしょう。物件の状況は、できるだけ詳細に確認してみてください。
実質利回りと入居率に注目を
投資用マンションの広告で紹介されるのは、ほとんどが想定利回りや表面利回りです。しかし、それだけではマンションの利回りを正しく把握することはできません。
投資用マンションを購入する際には、実質利回りや入居率も確認した上で、利回りを計算してみてください。
監修者:髙野友樹
株式会社 髙野不動産コンサルティング代表取締役。公認不動産コンサルティングマスター、宅地建物取引士。不動産会社にて仲介、収益物件管理に携わった後、国内不動産ファンドにてAM事業部マネージャーとして勤務。2014年、株式会社髙野不動産コンサルティングを創業。