マンションが老朽化したらどうする?老朽化による影響と対応を解説


建築から長い期間が経ったマンションは老朽化し、いろいろと不具合が出てくるものです。老朽化すると、マンションの管理費や修繕積立金が高くなるため、居住者の負担も大きくなってしまいます。
マンションが老朽化することで、具体的にはどのような影響があるのでしょうか。また、老朽化が進んだマンションにはどのような対応策がとられるのでしょうか。
ここでは、マンションが老朽化した場合に起こる変化と、その後の対応について解説します。

マンションが老朽化するとどうなる?

マンションが老朽化すると、外観・設備などの修繕や更新が必要な状態になります。具体的に、マンションにどのような変化・対応が生じるのかを確認しておきましょう。
マンションの老朽化による影響は、下記の5つが考えられます。

  • 外観の変化
  • 機能面での変化
  • 空室率が増加
  • 耐震基準を満たさない場合は耐震補強工事を
  • 資産価値の低下

まずはこれらについて、詳しくご説明します。

外観の変化

マンションの老朽化が進むと、建物の外観にその変化が見られるようになります。見た目でわかりやすいのは、外壁コンクリートのひび割れやタイルのはがれ、金属部分の錆などです。
特に注意したい劣化はひび割れで、放置すると場所によっては雨漏りにつながることもあります。

外観の変化

機能面での変化

マンションが老朽化すると、機能面では排水管の詰まりや漏水などのリスクが高くなります。
排水管が老朽化すると中身が詰まりやすくなり、各住戸の排水機能にも問題が出てくる可能性があります。排水が機能しないと日常生活にも大きな支障をきたすだけでなく、排水管の修理費用は高額になってしまうため、普段の生活でも注意する必要があるでしょう。

空室率が増加

どのようなマンションであっても、一般的には数年ごとに管理費や修繕積立金が高くなっていきますが、老朽化による劣化が進むと、より管理費や修繕積立金が高くなってしまいます。
管理費や修繕積立金が高くなると、居住者の負担も増えてしまうため、築年数が古くなると居住者が減ってしまうケースも珍しくありません。
そして、居住者が減って空室率が増加してしまうと、管理費や修繕積立金が不足する事態に。そうなると、さらに老朽化を加速させてしまいます。

耐震基準を満たさない場合は耐震補強工事を

1981年6月の建築基準法改正前に建てられたマンションは、旧耐震基準で設計されています。旧耐震基準では、震度6、7の地震に対する基準が定められていません。
新耐震基準で建てられ、耐震基準を満たしているのであれば問題ありません。しかし、1981年6月よりも前に建築確認がおこなわれたマンションであれば、旧耐震基準で建てられているため、耐震補強工事をおこなったほうがいいでしょう。

資産価値の低下

マンションの老朽化は、建物の資産価値にも影響を与えます。
マンションの資産価値は新築時がピークで、築10年前後を区切りに下がっていくことが一般的です。資産価値がゼロになることはありませんが、築30年を超えるとマンションの資産価値は大幅に下がります。
築年数が経っても資産価値を保つためには、早めに資産価値を維持するための対応が必要です。

老朽化したマンションへの対応

老朽化の進んだマンションへの対応は、主に下記の4つがあります。

  • 大規模改修工事をおこなう
  • マンションを建て替える
  • 区分所有権の解消(敷地売却)
  • 大規模改修前に売却する

いずれの方法も、区分所有者・居住者に負担がかかるため、慎重に判断する必要があります。4つの対応について、具体的にどのようなことをおこなうのか解説します。

老朽化したマンションへの対応

大規模改修工事をおこなう

大規模改修工事は、老朽化の進んだマンションの外見上の問題や機能・設備トラブルを全面的に修繕する工事です。具体的には、外壁塗装やタイルの補修、鉄部塗装、屋上防水補修、エレベーターなどの設備の更新をおこないます。また、耐震基準を満たしていないマンションであれば、耐震工事もおこなわれます。

また、大規模改修工事をおこなう場合は、改修工事にかかる費用相応の修繕積立金の残高があるかどうかが重要です。しかし、国土交通省がおこなった2018年度の調査「平成30年度マンション総合調査結果からみたマンション居住と管理の現状」によると、現在の修繕積立金の積立額が計画よりも不足しているマンションは34.8%。そのうち不足している金額の割合が20%を超えるマンションは15.5%となっています。
多くのマンションでは、販売当初の修繕積立金は低めに設定されています。そういった理由もあって、修繕積立金が不足してしまう事態に陥るマンションもあるのです。

マンションを建て替える

老朽化の度合いによっては、マンションを建て替えなければならないケースもあるでしょう。
建て替える場合、大規模改修よりも多額の資金と期間が必要になります。マンションを建て替えるとなると、工事期間中はマンションに住めないため、その間の住居を確保しなくてはなりません。

また、マンションを建て替えるのであれば、区分所有者の5分の4以上の賛成が必要となるため、管理組合での建替決議も求められます。合意が得られない場合は、建替工事までさらに時間がかかってしまいます。

このような理由から、建替えはほかの選択肢と比べてもハードルが高いといえるでしょう。

区分所有権の解消(敷地売却)

老朽化が進んだマンションへの最終的な対応と考えられるのが、区分所有権の解消(敷地売却)です。
2014年に敷地売却制度を盛り込んだ「マンションの建替え等の円滑化に関する法律」が改正されたことで、居住者全員の合意が得られなくても、区分所有者の5分の4以上の賛成があればマンションの建物の除却と敷地を売却できるようになりました。
なお、区分所有権を解消するためには、下記のような条件があります。

  • 耐震基準を満たしていないため、除却が必要と特定行政庁から認定を受けた要除去認定マンション
  • マンション敷地売却決議において、区分所有者、議決権および敷地利用権の持分価格の各5分の4以上の同意

決議された後は、敷地の売却を実施するマンション敷地売却組合を設立し、マンションの建替えや敷地売却に反対する区分所有者の敷地権を買い取ります。その上で、建替えや土地を含めた一括売却をおこない、分配金取得計画にもとづいて、区分所有者などに対して分配金を支払います。
このような分配金の支払いを受けることで、区分所有者は敷地売却後の生活のための資金を得られることになります。

大規模改修前に売却する

老朽化の進んだマンションは、外観や設備が劣化し、資産価値も下がってしまうため、買い手がなかなか見つからなくなってしまいます。
そのため、老朽化が進む前に売却してしまうというのもひとつの選択肢です。

スムーズに買い手を見つけるためには、所有しているマンションの現状を詳しく把握して、高く売るためのセールスポイントを明確にしなくてはなりません。状態が良いマンションほど、価値も高くなります。
また、次のような点も中古マンションを高く売るためには重要なポイントです。

  • 劣化や設備不良を修繕する
  • ハウスクリーニングをおこなう
  • 中古マンション売買の実績が豊富な不動産会社に相談する

老朽化したマンションを売りたいとなったら、不動産会社に相談することをおすすめします。老朽化したマンションは、リノベーションやリフォームをおこなえば高く売却することもできるため、古いマンションの買取りを積極的におこなっている不動産会社もあります。中古マンションの売買実績が豊富な、信頼できる不動産会社を探してみましょう。

マンションの老朽化対策には適切な補修や更新が必要

マンションは築年数が経つほど老朽化も進みますが、適切に修繕をおこなっていくことで老朽化を遅らせ、長く快適に住めるようになります。マンション購入を検討する際には、老朽化に伴うリスクも踏まえて物件を選ぶことが大切です。
また、大規模改修ができない場合の老朽化の対応として、建替えや敷地売却といった選択肢があることも理解しておきましょう。

監修者:髙野友樹
株式会社 髙野不動産コンサルティング代表取締役。公認不動産コンサルティングマスター、宅地建物取引士。不動産会社にて仲介、収益物件管理に携わった後、国内不動産ファンドにてAM事業部マネージャーとして勤務。2014年、株式会社髙野不動産コンサルティングを創業。

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