中古マンションの価格は、築年数によって変わります。基本的には築年数が経つほど価格は安くなりますが、価格が下落しにくい資産価値の高いマンションも存在します。資産価値が下落しにくいマンションには、どのような特徴があるのでしょうか。
ここでは、中古マンション購入を検討するなら知っておきたい、中古マンション価格の推移について解説します。
中古マンション築年数で見る価格の推移
マンションは、築年数によって価格が変化していきます。マンションによってその変化は多少異なりますが、基本的には築年数が経つごとに価格が安くなります。まずは、その傾向について見ていきましょう。
新築マンションが高い理由は新築プレミアム
マンションの購入価格は新築が最も高く、新築マンションをすぐに売却しようとしても、同じ価格では売却できません。
新築マンションの価格には、設計費や建築費に加えてデベロッパー(マンション開発会社)が物件を売り出すために使った広告費や営業費が上乗せされています。そこに、手つかずの新品であるという価値も加えた価格を、「新築プレミアム」と呼びます。そのため、新築マンションを購入した時点で、その価値は購入価格から下落してしまうことがあるのです。
新築プレミアムとして上乗せされる額は、物件価格の1、2割くらいが相場といわれます。新築にはそれだけ特別な価値があるということですが、反対に少しでも安く新しいマンションを買いたいのであれば、新築とさほど状態の変わらない築浅のマンションを検討したほうがいいかもしれません。
中古マンションは年数が増えるごとに価格が下がる
中古マンションは、一般的に築年数が経つほど価格は下がっていきます。築浅マンションは手放す人が少なく、それほど流通量は多くありませんが、価格はこの間にどんどん下落していきます。
築10年くらいまでは同様の傾向が続き、築11~20年くらいになると売却する人が増加。それに伴って、価格の下落幅はゆるやかになります。築20年くらいになると、新築のおよそ半額近くになることが一般的です。
築20年を過ぎると価格の変化は徐々に横ばいになっていきます。ただし、近年は築20年前後の中古マンションをリフォーム・リノベーションして住む人が増えたため、底値になるのは築25年頃だといえるでしょう。
資産価値が高いマンションとは?
築年数が経つほどマンションは安くなっていきますが、中には価格が大きく下落しないマンションも存在します。そういったマンションは資産価値が高いといえますが、どんなマンションなら資産価値が高いといえるのかについて説明していきます。
立地条件が良い
立地条件は、マンションの資産価値を決める最も重要な要素です。部屋そのものや設備は、劣化すればリフォームやリノベーションで新しくできますが、立地は変えることができません。
例えば、駅から近く、生活に便利で、治安が良く、自然災害にも強いといった立地条件は、年数が経っても大きく変化はしないでしょう。中でも特に重要なのは、交通と生活の利便性です。
交通の利便性は、駅からの距離が近く、その駅も主要ターミナル駅へアクセスしやすいかといった点で判断されます。複数路線の乗り入れや急行停車駅、電車以外の代替交通手段など公共交通機関の利便性は、都市部であるほど重視される傾向にあります。
生活の利便性は、商店街や大型スーパー、コンビニなどが近く、銀行、郵便局、学校、病院、公園なども利用しやすいといった条件で決まります。生活に必要な施設や機能が過不足なくそろっていて、アクセシビリティが高いかどうかがポイントになります。
それ以外には、周辺の景観、将来の発展性といった点も立地条件に含まれます。
管理が行き届いている
マンションの建物自体のグレードや、品質の高さも資産価値と関係があります。しかし、それ以上に大きく影響するのが、管理組合や管理会社による管理状態です。共用部分の清掃やメンテナンスがしっかりおこなわれ、ルールやマナーが守られていれば、管理状態はいいといえます。
また、修繕積立金が問題なく積み立てられていれば、定期的に修繕がおこなわれているはずです。修繕がしっかりおこなわれていれば、マンションの寿命が延びます。そういった物件であれば、資産価値が落ちにくいマンションだといえるでしょう。
時系列で見る中古マンション価格の推移
ここまでは、築年数によって変わる中古マンションの価格について解説しましたが、世の中の状況からもマンション価格は影響を受けます。これまでにマンション価格はどのように推移してきたのか、時系列で見ていきましょう。
2000年代半ばからの不動産ミニバブル
1980~1990年代にかけて、不動産バブルがあったのはよく知られています。その後、バブルが崩壊して地価は落ち着いたのですが、2000年代には不動産ミニバブルが起きました。
首都圏のマンション価格は、1990年代末から2000年代前半までは下落傾向にありましたが、2005年頃から上昇に転じ、2008年頃がピークとなりました。その要因は、外資系ファンドや国内の不動産ファンドが、不動産を購入しやすい環境がそろっていたからだといわれます。
しかし、2008年のリーマンショックを境に、このミニバブルも終わりを迎えます。マンション価格は下落し、2011年の東日本大震災もあって価格は停滞したままでした。
風向きが変わったのは、景気刺激策としての金融緩和が実施され、2013年秋に東京オリンピックの開催が決定した頃からです。その後、2019年までマンション価格は上がり続けています。
■首都圏新築マンションの平均価格推移
中古マンションの価格は下がりにくい
中古マンションは、2010年代後半から成約数が増え、価格も上昇を続けています。首都圏の中古マンションでは、2019年の平均成約価格と平均単価は、2012年に比べて約1.4倍となっています。
■中古マンション成約価格の市場動向
現在は、新型コロナウイルス感染症の拡大により、経済にさまざまな影響がありますが、中古マンションの価格は下落しにくくなっています。
その理由は、マンション所有者の多くは住宅ローンを利用しており、抵当権を抹消するためには、住宅ローン残高以上の価格で売却する必要があるからです。そのため、中古マンション価格は下がりにくくなっています。実際に、リーマンショック後でも中古マンション価格は下落しませんでした。
今後の見通しは不透明ですが、少なくとも中古マンションの価格がすぐに大きく下がることはないでしょう。
中古マンションの資産価値と経済状況を踏まえて検討
中古マンションの価格は、築年数が経つと下がっていきますが、資産価値の高いマンションであれば、その下落幅はゆるやかになります。中古マンションの購入を検討する際には、立地条件などを確認し、マンションの資産価値を踏まえた上で検討するようにしましょう。
また、中古マンションの価格はすぐには下がりにくいとはいえ、経済は変化していきます。世の中の状況も理解した上で、中古マンションの購入を検討してみてください。
監修者:髙野友樹
株式会社 髙野不動産コンサルティング代表取締役。公認不動産コンサルティングマスター、宅地建物取引士。不動産会社にて仲介、収益物件管理に携わった後、国内不動産ファンドにてAM事業部マネージャーとして勤務。2014年、株式会社髙野不動産コンサルティングを創業。